2026年も早いもので、もう3月になりました。
昨年の振り返りを記事にまとめるには、少し遅すぎるタイミングかもしれませんが、今この時期だからこそ、冷静に2025年という「転換点」を再定義し、これからの2年で進むべき方向を見出すことには大きな価値があります。
Unityをキャンバスにするデザイナーとして、私たちは「技術の進化」だけでなく「市場の変容」にどう適応すべきか。
激動の2025年を総括し、2026年から2027年にかけての展望を論理的にハックしていきましょう。
2025年の総括:巨大資本の停滞と「作家性」の逆襲
2025年は、これまでのゲーム業界を支えてきた “AAA(トリプルエー)タイトル” というビジネスモデルが、明確に限界を露呈した年として記憶されるでしょう。
数百億円規模の予算を投じ、数千人のスタッフを数年間拘束して作る「巨大な正解」が、必ずしもユーザーの支持を得られないケースが相次ぎました。
その一方で、Unityを駆使して「特定のルック」や「独自の遊び」に特化した中規模から大規模なタイトルが、市場の熱狂を勝ち取る場面が目立ちました。
1. 注目作の明暗:『トライブナイン』に見る多角的な評価
2025年の注目作として外せないのが、アカツキゲームスによる『トライブナイン』です。
この作品は、単なるゲーム化に留まらず、アニメやWeb3など多角的な展開を前提とした「IP(知的財産)の実験場」としての側面を持っていました。
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表現の評価:
「エクストリームスポーツ×バトル」という独自のコンセプトを、Unityでいかにスタイリッシュに表現するか。
そのビジュアル密度と演出の「外連味」は、多くのデザイナーに刺激を与えました。 -
市場の反応:
一方で、巨大IPゆえの「期待値のコントロール」や「運営コストの肥大化」といった、現代のゲーム運営が抱える難しさを浮き彫りにした側面もあります。
これは、2025年にサービスを開始した多くのタイトルが直面した「初動の爆発力と維持のコスト」というジレンマを象徴していました。
2. 相次ぐサービス終了と「持続可能性」の欠如
2025年は、サービス開始から1年を待たずに幕を閉じたタイトルが過去最高水準に達しました。
特に「AAA並みのビジュアルを維持しながら毎日更新する」というスマートフォン向けRPGのモデルが、多くの現場で悲鳴を上げた結果です。
「リッチな絵を作れば売れる」という時代は終わり、ユーザーは「そのビジュアルがゲームの体験価値とどう結びついているか」を冷徹に見極めるようになりました。
「AAAタイトルが厳しい」と言われる本質的な理由
2025年を通じて、なぜAAAタイトルがこれほどまでに苦戦を強いられたのか。
それは単純な「不況」ではなく、開発構造そのものの「不整合」にあります。
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開発期間の長期化とトレンドの乖離:
5年かけて作った「最高のリアル」が、リリース時にはすでに「古い表現」になってしまうリスク。 -
人的リソースの限界:
一つの岩、一本の木に過剰な工数をかける「物量作戦」が、デザイナーの創造性を摩耗させ、プロジェクトの機動力(ピボットする力)を奪ってしまったこと。
この状況を受け、2025年後半からは多くの企業が “効率化” と “作家性の担保” の両立へと舵を切りました。
2026年〜2027年の展望:これから2年で求められる「需要傾向」
2025年の反省を踏まえ、これからの2年で主流となるのは「物理的な物量」ではなく「知的な表現密度」です。
Unityデザイナーに求められるスキルセットは、以下のようにシフトしていくでしょう。
1. 「効率的リッチ」を実現するテクニカルな視点
AAAのような「すべてを手描き・手作業で埋める」のではなく、以前の記事で紹介したレジェンドたちの手法のように「記号化」や「シェーダーによる自動化」を駆使した、賢いリッチさが求められます。
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需要:
AIを活用したアセット生成のパイプライン構築や、VFX Graphを用いた「プロシージャル(数式による自動生成)」な演出。
これらは、少人数でAAA級のインパクトを出すための必須技能となります。
2. 「フォトリアル」から「ハイパー・スタイライズド」へ
現実を模倣するコストが上がり続ける中、2026年以降は「独自のルック(絵作り)」を持つタイトルの需要がさらに高まります。
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需要:
『スパイダーバース』や『Arcane』のような、独自の美学に基づいたルック管理(Look Dev)ができるデザイナーの価値は、これまで以上に高騰します。
「正解のない絵」を論理的に構築し、それをUnity上でパフォーマンスを維持しながら実装する能力が、プロジェクトの成否を分けるでしょう。
3. 「ライブ・デザイナー」という概念の定着
ゲームを作って終わりではなく、リリース後の変化に即座に対応する「ライブ感のあるデザイン」が重要になります。
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需要:
ユーザーの反応を見て、数日で演出をアップデートする、あるいは季節やイベントに合わせて画面全体の「空気感」をVolume設定一つで変えていく。
こうした「柔軟な対応力」を前提としたデータ設計ができるデザイナーが、長期運営タイトルの心臓部を担うことになります。
おわりに:私たちは「何を」作るべきか
2025年の市場総括を一言で表すなら、それは「過剰な物量への決別と、純粋な体験への回帰」です。
巨大なプロジェクトが沈み、小回りの効く独自の表現を持ったプロジェクトが浮上する。
このダイナミズムは、Unityという強力な武器を持つ個々のデザイナーにとって、むしろ大きなチャンスと言えます。
「もう3月」と思うか、「まだ3月」と思うか。
2025年の教訓を糧に、2026年の後半戦、そして2027年に向けて私たちがすべきことは、ただの作業者になることではありません。
技術を「ハック」し、物理法則の先にある「感情の揺さぶり」を最小のコストで最大化する「表現の設計者」になることです。
激動の時代だからこそ、自身の「引き出し」を整理し、次なる一手へと繋げていきましょう。
