これまでの連載で、私たちはUnityという箱庭の中で完璧な世界を作ってきました。
第27回からは、その箱庭の壁を飛び越えて、自分のデザインを「現実の風景」と重ね合わせる技術、AR(拡張現実)の世界を覗いてみましょう。
「ARなんて、専門のエンジニアがやることでは?」と思うかもしれません。
しかし、自分の作ったエフェクトを等身大のサイズで眺めたり、現実の光の中でどう見えるかを確認したりすることは、デザイナーの「空間感覚」を養うための素晴らしい経験になります。
今回は、AR制作の入り口として「AR Foundation」の基礎を攻略します。
なぜデザイナーがARを学ぶのか?
「ARはエンジニアの仕事」と思われがちですが、実はデザイナーが最も力を発揮できる分野です。
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スケール感の確認: 「このエフェクト、スマホで見るとどれくらいの大きさ?」を瞬時に体感できる。
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場所の文脈: 「夕方の公園で見たとき、このシェーダーはどう見えるか?」といった、現実の光との調和をデザインできる。
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新しいUX: 画面タップだけでなく、自分が動くことで視点が変わるという「身体的体験」を設計できる。
ARを構成する「3つの必須パーツ」
AR Foundationを使うとき、ヒエラルキーには必ず以下の3つの要素をセットします。
| パーツ名 | 役割 | デザイナー向けの解釈 |
| AR Session | ARの生命維持装置 | ARの「電源」を入れるスイッチ。 |
| AR Session Origin | 現実と仮想の原点 | 現実の床を、Unityの (0, 0, 0) として定義する場所。 |
| AR Camera | あなたのスマホの目 | 現実の映像を背景として映し出すカメラ。 |
実践:現実を「スキャン」して物を置く
ARデザインの第一歩は、スマホに “「そこが床である」と認識させること” です。
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Plane Managerを追加:
AR Session OriginにAR Plane Managerというコンポーネントを付けます。 -
床が見えるようにする: 現実の床を認識したときに表示される「目印(プレハブ)」を設定します。
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Point Cloud: 周囲の「点(特徴点)」を捉えることで、スマホが自分の位置を把握できるようになります。
💡 デザイナーのアドバイス:
最初は「真っ黒な床」などではなく、少し模様のある床で試してみてください。スマホのカメラが特徴(エッジ)を見つけやすくなり、ARの精度が安定します。
ARデザインの「鉄則」:実寸大の魔法
ARで最も重要なのは 「Scale(尺度)」 です。
Unityのインスペクターでの Scale: 1 は、ARの世界では 「1メートル」 として計算されます。
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キャラクターを置くなら:
Scale: 0.2前後(20cmくらい)にすると、机の上にちょこんと乗って可愛く見えます。 -
UIを表示するなら: 手元で操作しやすい「30cm〜50cm先」に配置するのが、人間の腕の長さとして最も心地よい距離です。
まとめ:世界があなたのキャンバスになる
今回は、AR制作の土台となる AR Foundation の考え方を学びました。
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AR Foundation は、iOS/Android両対応の共通ルール。
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Session と Origin がARの基本セット。
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Scale: 1 = 1メートル の感覚を叩き込む。
画面の端(Border)が存在しないARの世界では、あなたのデザインは「見るもの」から「そこに在るもの」へと変わります。
次回は、今回作ったARの土台をさらに活用し、 “自分のデザインを現実世界へ最適化するワークフロー” について解説します。
自分のエフェクトを等身大で眺める感動を、ぜひ味わってください!
