『Unity』の基本操作をマスターし、自分の思い描いた世界を形にできるようになってくると、次に考えるべきは「その作品を誰に、どこで届けるか」というプロフェッショナルな視点です。
初心者のうちは「意図した通りに動くこと」が最大の目標でした。
しかし、中級者以上を目指し、さらに作品を全世界に向けて公開(パブリッシュ)することを考えるなら、作品がユーザーや社会に与える影響、そして各国の法律や文化的な背景まで視野に入れる必要があります。
せっかく心血を注いで作ったゲームが、”公開直後に炎上”したり、”特定の国で配信停止”になったり、
最悪の場合”誰かの健康を損なう”ことになっては、クリエイターとしてこれほど悲しいことはありません。
本連載では、クリエイティブ制作において「絶対に知っておくべき禁止事項と配慮」を全6回にわたって深掘りしていきます。
第1回となる今回は、これから学んでいく5つのカテゴリーの全体像を把握していきましょう。
法律に関わる「公共・権利のシンボル」
まず最も注意が必要なのが、法律で保護されているシンボルです。
代表的な例は“赤十字標章”です。
回復アイテムや病院の看板に「白い背景に赤い十字」を安易に使っていませんか?
これは『ジュネーブ条約』により、紛争時の医療保護を目的として厳格に管理されており、ゲーム内での使用は法律で禁止されています。
また、実在する警察や軍の紋章、あるいは日本の「卍(まんじ)」マークのように、海外では別の歴史的シンボルと混同されやすいものにも注意を払う必要があります。
これらは「知らなかった」では済まされない、法的リスクに直結する項目です。
世界基準の壁「政治・宗教・歴史」
『Unity』で制作したゲームを『Steam』などで全世界に配信する場合、日本の「当たり前」は通用しません。
“ハーケンクロイツ”に代表される独裁政権のシンボルは、ドイツなどの一部の国では表示自体が厳禁です。
また、宗教的なアイテムを「悪の象徴」として不適切に扱うことも、熱心な信者の方々からの強い反発を招く恐れがあります。
「かっこいいから」「演出として強烈だから」という理由だけで、特定の国や文化の歴史的背景を無視したデザインを採用することは、グローバルな市場では致命的なミスとなり得ます。
無意識の攻撃「ジェスチャーとポーズ」
キャラクターにポーズをつける際、その意味を多角的に調べたことはありますか?
例えば、日本では勝利の証である「ピースサイン」も、手の甲を相手に向ける”裏ピース”になると、イギリス圏では非常に強い侮辱の意味を持ちます。
また、親指を立てる”サムズアップ”も、中東の一部では深刻な侮辱表現となります。
意図せずキャラクターがユーザーを煽っているような表現にならないよう、世界のジェスチャー文化への理解を深めることは、中級クリエイターに必須の教養です。
ユーザーを守る「健康と安全への配慮」
ゲームは楽しむためのものですが、時にはユーザーの身体に直接的なダメージを与える「凶器」にもなり得ます。
かつて日本で起きた「ポケモンショック」をご存知でしょうか。
激しい画面のフラッシュ(光の点滅)は“光過敏性発作”を引き起こすリスクがあります。
また、カメラの揺れすぎによる”3D酔い”や、不快な高周波音による聴覚への攻撃も無視できません。
「表現の激しさ」と「ユーザーの安全」のバランスをどう取るか。
これは『Cinemachine』や『Post-processing』の知識を駆使する、中級者ならではの技術的領域です。
配信の門番「各プラットフォームの審査」
最後に、ビジネス的な側面として『App Store』や『Google Play』、『CERO』などの審査基準があります。
特に「児童の性的・暴力的描写」や「実在する薬物の美化」には非常に厳しい目が向けられます。
たとえ設定上の年齢が成人であっても、「見た目が幼く見える」だけでアウトになるケースも増えています。
審査に落ちて公開できないという事態を防ぐためにも、各媒体のコンプライアンス(法令遵守)を常にアップデートしておく必要があります。
第1回のまとめ:中級者に求められる「責任ある表現力」
表現の自由は尊重されるべきですが、それは「何をしてもいい」ということではありません。
- 法律を守り、権利を侵害しない
- 文化や歴史を尊重し、不要な対立を避ける
- ユーザーの健康を第一に考え、安全な設計を行う
- 各媒体の基準を理解し、適切に審査をパスする
これらを踏まえた上で、最大限の面白い表現を探求すること。
これこそが、真の『Unity』中級クリエイターに求められる資質です。
次回、第2回からはこれらの項目を一つずつ詳しく掘り下げていきます。
まずは、最も身近で陥りやすい罠「法と権利:シンボルの罠」について解説します。
回復アイテムのデザインを修正する準備はできていますか?

