PCのモニターで見ているデザインは、常に「枠」の中にあります。
しかし、ARの世界に枠はありません。
自分の部屋のデスクに、第12回で作ったパーティクルを置いてみたとき、初めてそのデザインの “本当の質感” がわかります。
今回は、デザイナーがARを使って自分の作品をセルフ添削するためのポイントを3つに絞って解説します。
スケール感の「セルフ添削」
Unityの 1ユニット = 1メートル というルールは、モニター越しだとどうしても感覚が狂いがちです。
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チェック方法: Unity内に「30cmの立方体(Cube)」を置いて、自分のスマホでARとして表示してみましょう。
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デザインの修正: 「手のひらに乗るサイズ」を意図したエフェクトが、実際はスイカくらいの大きさになっていませんか? ARで見ることで、キャラクターの目の高さや、UIの文字の読みやすさを “物理的な距離感” として正しく修正できます。
影を落として「存在感」をデザインする
ARで最も「CGっぽさ」が出てしまう原因は、地面に影がないことです。現実の机の上に浮いているように見えては、デザインの説得力が半減します。
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AR Shadow Catcher(シャドウキャッチャー): Unityには、影だけを受け止めて、それ以外は透明になる特別なマテリアル設定があります。
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効果: これをARの床面に設定するだけで、あなたの作ったエフェクトやモデルが「そこに置かれている」という強い実在感を放ち始めます。
現実の光に馴染ませる「ルック確認」
第23回で学んだライティングを思い出してください。ARでは、スマホのカメラが捉えた現実の明るさをUnity側に反映させる技術がありますが、まずは “自分の目で見て、違和感を調整する” ことがデザイナーの仕事です。
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確認ポイント:
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明るさ: 蛍光灯の下で見ると、シェーダーの発光(Emission)が強すぎて白飛びしていないか?
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色味: 現実の風景に対して、色が鮮やかすぎて浮いていないか?
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調整: スマホで確認しながら、Post-Processingの強度を少し下げたり、テクスチャの色味を環境に馴染むよう微調整します。
デザイナーの「現場」にARを取り入れる
アパレルなら服のシワ、プロダクトデザインなら筐体のサイズ感。
これらを「サンプルが届く前」に実寸大で確認できるのは、デザイナーにとって最強の時短術です。
料理に例えるなら、ARでの確認は “配膳前の味見” です。
キッチン(Unity)で作っているときには完璧だと思っても、実際のお客さんのテーブル(現実空間)に並べてみると、お皿のサイズや盛り付けの高さが気になってくるもの。
その「最後の一工夫」をARで行いましょう。
まとめ:ARは「究極の校正ツール」
今回は、ARをデザインの確認作業に組み込むワークフローを学びました。
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1ユニット=1メートルを、AR上の実寸で再確認する。
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シャドウキャッチャーで影をデザインし、実在感を出す。
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現実の光との調和を、自分の目で見てルックデブする。
「モニターの中」という安全地帯を抜け出し、現実の過酷な光や雑多な背景の中で、なお美しく見えるデザイン。
それを作れるようになったとき、あなたのUnityスキルは本物になります。
次回は、いよいよこれまでの成果物をスマホに書き出すための最終関門、『第29回:実機ビルド:iPhone/Androidで自分の作品を体験する』 です。
ケーブルを繋いで、あなたのデザインを自分のスマホへ転送しましょう!
