これまでに学んだ技術を使えば、UIを派手に動かすことは簡単です。
しかし、デザイナーが最もこだわるべきは、派手さではなく “触った瞬間の心地よさ(フィードバック)” です。
スマホやゲーム機で、なぜか何度も触りたくなるボタンやメニューがありますよね。
その「気持ちよさ」の正体と言語化、そしてUnityでの作り方を解説します。
「Game Feel(触感)」を構成する3つの要素
ユーザーが画面上のボタンに触れたとき、脳は無意識に「手応え」を期待します。
優れたUXデザインには、必ず以下の3つのフィードバックがセットになっています。
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視覚的変化(Visual): 大きさが変わる、色が変わる、光る。
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物理的変化(Motion): 弾む(Overshoot)、震える(Shake)。
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時間軸の工夫(Timing): 触れた「瞬間」に反応し、「余韻」を残して消える。
実践:100点のボタン・アニメーションを作る
第25回で学んだ DOTween を使い、「ただ切り替わるだけ」のボタンを「極上のボタン」にアップグレードしましょう。
① 触れた瞬間の「縮み」と「戻り」
ボタンを押したとき、少しだけ(0.9倍程度)小さくし、離した瞬間に1.1倍まで弾んでから1.0倍に戻る設定にします。
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コツ:
OutBackのイージングを使うと、この「少し行き過ぎて戻る」動きが簡単に作れます。
② 色の「余韻(Linger)」
クリックしたとき、一瞬だけ白く光らせ(Flash)、その後ゆっくり元の色に戻るようにします。
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コツ: ユーザーに「自分の操作が受け付けられた」という確信(アフォーダンス)を与えます。
③ パーティクルの隠し味
第12回で作ったパーティクルを、ボタンが押された瞬間に数粒だけ散らしてみましょう。これが「ご褒美(Juice)」となり、触る楽しさを倍増させます。
画面遷移のデザイン:視線の誘導
ページを切り替えるとき、画面がパッと切り替わるのはユーザーの視線を迷わせる原因になります。デザイナーは「視線の連続性」を意識しましょう。
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フェード(Fade): 最も安全で上品。空気感を作るときに。
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スライド(Slide): 階層構造(進む、戻る)を伝えるときに有効。
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ズーム(Zoom): 特定の要素(画像など)に潜り込むような没入感を出すときに。
💡 デザイナーのアドバイス: 画面遷移の時間は 0.2秒〜0.4秒 が黄金律です。0.1秒だと早すぎて変化に気づかず、0.5秒以上だとユーザーは「遅い(重い)」と感じ始めます。
料理で例える「UXの隠し味」
前回のライティング編と同様、UXも料理に例えると分かりやすくなります。
ボタンの反応や遷移は、料理における 「食感」 です。 どんなに見た目が豪華な料理(美しいUI)でも、噛んだ時の食感がグニャグニャ(反応が鈍い)だったり、硬すぎたり(動きがカクカク)すると、美味しさは半減してしまいます。
「見た目(UIデザイン)」に「心地よいリズム(UXアニメーション)」という食感を加えることで、初めてユーザーに「満足感」というデザートを提供できるのです。
まとめ:UXは「ユーザーへの敬意」
今回は、Unityで触感(フィードバック)をデザインする方法を学びました。
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微細な変化(拡大縮小・色)が「手応え」を生む。
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0.3秒前後 のスピード感が、心地よさと機能性のバランスを保つ。
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連続性のある遷移 で、ユーザーを迷わせない。
「動かせる」ようになった次のステップは、「どう動かせば、ユーザーの心が動くか」を考えることです。
次回はいよいよ、あなたのデザインを現実世界へ連れ出す 『AR Foundation 基礎:AR(拡張現実)のデザイン』 に挑戦します。画面の中を飛び出す体験を、一緒に作りましょう!
