『Unity』で和風のファンタジーや歴史物を制作する際、私たちは「日本らしさ」を強調するために特定の記号やデザインを多用します。
しかし、それらが海外のプレイヤーにどう映るかは、国内の感覚とは大きく異なります。
ここでは、旭日旗を含む、グローバル市場で特に注意すべき4つの落とし穴について解説します。
旭日旗(きょくじつき)と放射状デザイン
第3回本編でも触れましたが、旭日旗のデザインは東アジア圏において、過去の軍国主義の象徴として極めてデリケートに扱われます。
- 落とし穴: 「おめでたい、勢いがある」という意図で、背景の集中線やエフェクトに赤と白の放射状デザインを採用してしまう。
- リスク: 特定の国での配信停止、不買運動、プラットフォームからの修正勧告。
- 回避策: 放射状の線の本数を変える、色を赤以外(金、青など)にする、あるいは円形ではなく雲や波の文様と組み合わせるなど、「旭日旗そのもの」に見えない抽象的な演出に切り替えましょう。
「卍(まんじ)」とハーケンクロイツの混同
日本の地図記号や仏教寺院の象徴である「卍」は、欧米諸国ではナチス・ドイツの「鉤十字(ハーケンクロイツ)」と同一視されることがほとんどです。
- 落とし穴: 寺院の壁やキャラクターの衣装に「卍」を描く。
- リスク: 「ネオナチ的思想の肯定」と誤解され、AppleやGoogleの審査で即座にリジェクト(拒絶)される、あるいは欧州での販売が法的に不可能になる。
- 回避策: 海外向けアセットでは「三重の塔」のアイコンや「巴(ともえ)」紋、あるいは別の家紋風デザインに差し替えましょう。
ただし、直接 “家紋” を使用してしまうのは問題のため、あくまでも それらしい イメージとして使用してください。
神聖な空間と「オブジェクト」の扱い
鳥居、お守り、仏像などは、日本人にとっては身近な意匠ですが、本来は宗教的な神聖さを持つものです。
- 落とし穴: 鳥居を「破壊可能な障害物」にする、お守りを「道端に落ちているゴミ」のようなグラフィックで表現する。
- リスク: 特定の文化や信仰を「軽視している」という批判。特に多神教に馴染みのない文化圏では、これらが「偶像」として非常に強い意味を持って受け取られることがあります。
- 回避策: 破壊演出を避ける、あるいは「重要アイテム」として敬意を持った配置を行うなど、コンテキスト(文脈)への配慮を欠かさないようにしましょう。
地域・民族への感度(アイヌ・琉球文化など)
近年、ゲームにおける「多様性(DEI)」への関心が高まっており、日本国内の少数民族や地域の文化を扱う際にも、これまで以上に慎重なリサーチが求められます。
- 落とし穴: アイヌ文化や琉球文化の文様を、意味を知らずに「ファンタジー風の模様」として改変して使用する。
- リスク: 文化の私物化(Cultural Appropriation)としての批判。
- 回避策: 文様の一つひとつにある意味を学び、その文化への敬意(リスペクト)を込めて扱うか、特定の文化を特定できない完全なオリジナルデザインを作成しましょう。
皇室の象徴「十六八重表菊(菊の紋章)」
和風デザインにおいて、花をモチーフにした紋章は一般的ですが、「菊の紋章」の扱いには細心の注意が必要です。
- 落とし穴: 皇室の象徴(十六八重表菊)に極めて近いデザインを、安易にゲーム内の装飾やボタンに使用してしまう。
- リスク: 日本国内において「天皇を象徴する不敬な扱い」として強い批判を受ける可能性があるだけでなく、右翼団体等からの抗議を招くリスクもあります。
- 回避策: 花びらの枚数を変える、形を大幅に抽象化するなど、「特定の権威を象徴する紋章」と明確に区別できるデザインにすることが鉄則です。
「家紋」の商用・創作利用のリスク
歴史上の人物が登場するゲームを作る際、実在する「家紋」を使いたくなりますが、これにもリスクが伴います。
- 落とし穴: 現存する特定の家系の家紋を、設定上の意図なくそのまま使用する。
- リスク: 家紋はその家系の誇りであり、大事なアイデンティティです。無断で使用したり、その家紋を背負ったキャラクターを卑劣に描いたりすることで、子孫の方々や関係団体から修正を求められるケースがあります。
- 回避策: 史実に基づいた作品でない限りは、複数の家紋を組み合わせた「架空の家紋」を作成するか、著作権的にクリアな素材集であっても「その家紋が持つ歴史的意味」を調べてから使用しましょう。
まとめ:中級者に求められる「デザインの翻訳」
和風デザインを世界へ届ける際、必要なのは単なるコピー&ペーストではなく、「文化の翻訳」です。
自分のデザインが、他国の歴史や信仰、感情のフィルタを通したときにどう見えるか。
その想像力を持つことが、作品の品位を守り、より広い層に受け入れられる鍵となります。
『Unity』の機能を駆使して美しい「和」を表現するのと同時に、その裏側にある「責任」もデザインしていきましょう。

