どんなに素晴らしいゲームを作っても、プラットフォームの審査を通らなければ世界中のプレイヤーに届けることはできません。
審査ガイドラインは膨大ですが、彼らが最も恐れ、絶対に許さない「三大タブー」があります。
それは “「児童保護」「自傷行為」「過度な性表現」” です。
これらは文化や文脈に関係なく、一発でリジェクト(配信停止)される最強の地雷です。
今回は、この三大タブーの具体的な基準と、地域ごとに異なる規制の「境界線」をUnityでどう乗り越えるかを解説します。
絶対的なタブー:児童ポルノと搾取
世界中のあらゆるプラットフォームで、「児童に対する性的対象化・虐待・搾取」は最も重い罪です。
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審査基準(App Store/Google Play共通):
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未成年(または未成年に見えるキャラクター)の性的な描写は、いかなる文脈でもNGです。
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服を着ていても、ポーズやカメラアングルが性的であればアウトです。
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「実在しないファンタジーの種族だからOK」という言い訳は通用しません。
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Unity中級者の落とし穴:
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アセットストアで購入したキャラクターモデルが、実は非常に際どい衣装を着ていることに気づかず、そのまま使ってしまうケースが後を絶ちません。
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命に関わるタブー:自殺・自傷行為の肯定
メンタルヘルスへの配慮が世界的に強まる中、 “自ら命を絶つ行為” の描写は厳格に規制されています。
審査基準:
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自殺、リストカット、拒食症などを「解決策」や「かっこいい行為」として描くことは絶対にNGです。
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プレイヤーキャラクターがゲームオーバー時に自殺する演出も、レーティングによってはリジェクト対象です。
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ホラーゲームの演出であっても、ガイドラインによっては「過度に具体的でリアルな描写」は規制されます。
地域で変わる境界線:性表現の「OK/NGライン」
最も厄介なのが、国によって基準がガラリと変わる「性的な表現」です。
ここでは、「下乳と鼠径部」を例に、その奇妙なねじれ現象を解説します。
日本 (CERO) の傾向:
- NGライン: 性器、乳首の露出は絶対NG。
下着の露出(パンチラ)も、文脈によってはレーティングが上がります。 - 意外なOKライン(グレーゾーン): “下乳(アンダーブーブ)” の露出は、乳首が見えていなければ比較的寛容な傾向があります。
水着やファンタジー衣装として「ギリギリセーフ」と判断されることが多いです。
欧米 (ESRB/PEGI) の傾向:
- NGライン: 乳首や性器はもちろんNG。
さらに、日本よりも “性的な意図を感じるポーズやアングル” に厳しい傾向があります。 - 意外なNGライン:“鼠径部(そけいぶ=太ももの付け根、Vライン)” の露出や、そこに食い込むようなハイレグ衣装は、
日本よりも「性的な強調」とみなされやすく、リジェクトや高レーティングの対象になりやすいです。
“下乳” よりも “Vライン” の方が危険視されるケースがあります。
中東・一部アジアの傾向:
- NGライン: 肌の露出そのものがタブー視されます。
女性キャラクターは、髪、腕、脚を覆う服装が求められるケースが多いです。
「下乳」も「鼠径部」も論外です。
中級者のためのUnity実装術:地域別アセット差し替え
これだけ基準が違うと、「全世界共通の安全なデザイン」を作るのは困難です。そこで、Unityの機能を駆使して 「地域ごとにアセットを差し替える」 実装が不可欠になります。
実装ステップ:Scripting Define Symbols の活用
Unityのビルド設定にある Scripting Define Symbols を使えば、コードのコンパイル時に地域ごとの処理を分けることができます。
- シンボルの定義:
Project Settings > Player > Other Settings > Scripting Define Symbolsに、地域ごとのシンボルを定義します(例:REGION_JP,REGION_US,REGION_ME)。 ※ビルド時にスクリプトで自動設定するのが一般的です。 - コードでの分岐: プリプロセッサディレクティブ(
#if)を使って、ロードするアセットのパスを切り替えます。
using UnityEngine;
using UnityEngine.AddressableAssets; // Addressablesを使うと便利
public class CharacterLoader : MonoBehaviour {
public AssetReference characterJapan;
public AssetReference characterGlobal;
void Start() {
#if REGION_JP
// 日本向け(下乳OK、Vライン控えめ)モデルをロード
characterJapan.InstantiateAsync(transform);
#else
// グローバル向け(露出控えめ)モデルをロード
characterGlobal.InstantiateAsync(transform);
#endif
}
}
Addressablesとの連携
上記のように、Addressable Asset Systemと組み合わせることで、
「日本版ビルドには日本用のアセットしか含めない」ということが可能になり、アプリサイズも最適化できます。
連載まとめ:クリエイターの「覚悟」
全6回にわたる連載、お疲れ様でした。
私たちが作るゲームは、国境を越え、文化を越え、様々な背景を持つ人々の手に渡ります。
そこには、私たちが想像もしなかった「地雷」が無数に埋まっています。
しかし、「だから何も表現しない」のが正解ではありません。
- 知ること: どこに地雷があるのかを学び続けること。
- 備えること: Unityの技術でリスクを回避する術を身につけること。
- 想像すること: 画面の向こう側にいる、自分とは違う誰かの痛みに思いを馳せること。
この3つを持ったクリエイターだけが、リスクを恐れずに「本当に表現したいこと」を世界に届ける資格を持ちます。
あなたの作るゲームが、誰かを傷つける凶器ではなく、誰かの心を救う最高のエンターテインメントになることを、心から願っています。

