第3回:光の溢れ出し―Bloomとレンズの「汚れ」の相関関係

Unity(デザイナー向け)

Unityでポストプロセスを設定する際、真っ先に手が伸びるのが 『Bloom』 ではないでしょうか。
暗い画面で光源を光らせれば、それだけでリッチな画に見える魔法のツールです。

しかし、中級デザイナーが目指すべきは「単に光らせること」ではなく、「光の物理的な滲み(にじみ)」と「レンズという物理的なフィルターの存在」を表現することです。
今回は、デジタルな光を現実に引き寄せるための、一歩進んだ設定術を解説します。


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Bloomの「閾値(Threshold)」が絵の品格を決める

『Bloom』 コンポーネントを開くと、まず目に入るのが “Threshold” (閾値・しきいち)と “Intensity” (強度)というパラメータです。
初心者はよく “Intensity” を上げて光を強くしようとしますが、画作りの鍵を握っているのは実は “Threshold” の方です。

閾値(Threshold)のデザイン

“Threshold” とは、「どの程度の明るさから光を溢れさせるか」を決める境界線です。

  • 低すぎる場合: 画面全体の明るい部分がすべてぼんやりと光り、解像感が失われ、いわゆる「一昔前のCG」のような眠たい絵になります。

  • 適切に設定する場合: 太陽のハイライト、街灯、鋭い反射光など、真に輝いている部分だけが溢れ出すように調整します。

中級デザイナーへのアドバイスとして、HDR(ハイダイナミックレンジ)カラーを意識しましょう。
マテリアルの “Emission” を “1.0” 以上(例えば “2.0” や “10.0”)に設定し、ポストプロセスの “Threshold” を “1.0” 前後に設定することで、「現実的に眩しい場所だけが光る」という論理的なセットアップが可能になります。


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レンズの「汚れ」をテクスチャで描く

現実のカメラレンズは、どれだけ大切に扱っていても、微細な埃や皮脂、結露などが付着しています。
これらは普段は見えませんが、強い光が入ってきた瞬間に反射し、その存在を主張します。これが “Lens Dirt” (レンズ汚れ)です。

Unityの 『Bloom』 設定内にある “Dirt Texture” スロットにテクスチャを割り当てることで、この現象を再現できます。

汚れを「空気感」に変える手法

“Lens Dirt” は、画面を汚すためのものではありません。
そこに「レンズという硝子(ガラス)が存在している」ことをプレイヤーに意識させ、没入感を高めるためのものです。

  • 指紋や油膜のテクスチャ: 夜の街灯や車のヘッドライトを映すシーンでは、少し油膜がかったテクスチャを使うことで、湿度や生々しさを演出できます。

  • 微細な埃のテクスチャ: 砂漠や廃墟などの乾燥したステージでは、小さな粒子のテクスチャを重ねることで、空気中の塵がレンズに付着しているような「環境の過酷さ」を表現できます。

重要なのは、そのテクスチャの “Intensity” を極めて低く保つことです。
「言われないと気づかないが、消すと何かが物足りない」という塩梅が、中級者の仕事です。


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レンズフレアの構造:ゴーストとハレーション

強い光源を直視したときに発生する「光の輪」や「六角形の連なり」。
これらは 『Lens Flare』 と呼ばれます。現在のUnity(特にURPやHDRP)では、より高度な物理ベースの 『Lens Flare (SRP)』 が利用可能です。

デザイナーが知っておくべきフレアの構成要素は主に二つです。

  1. ハレーション(Halation): 光源の周りにポワッと広がる光の霧。
    空気の密度や湿り気を感じさせます。

  2. ゴースト(Ghosting): レンズ内部で光が反射し、光源と対角線上に並ぶ光の図形。
    カメラが動く際にこれらが連動して動くことで、プレイヤーは「カメラ越しにこの世界を見ている」という実感を強く持ちます。

デザイナーへのヒント:あえて「不完全」を足す

現代の高性能なレンズは、これらフレアを抑えるように設計されています。
しかし、シネマティックな絵作りにおいては、この「レンズの不完全さ」こそがドラマチックな効果を生みます。
SF映画のような「青く鋭い横長のフレア」や、夕陽を浴びた時の「暖かく大きな輪」を意図的に配置することで、シーンの温度感までコントロールできるようになります。


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まとめ:光は「媒体」を介して届く

第3回では、光がレンズという媒体を通る際に起こる現象を学びました。

  • 『Bloom』 は高輝度な部分にのみ適用し、画面の「キレ」を維持する。

  • “Lens Dirt” で機材の存在感を出し、世界の空気感を描く。

  • 『Lens Flare』 はレンズの不完全さを演出し、ドラマチックな視点を作る。

これらを組み合わせることで、Unityの画面は「計算された色の集まり」から「光が満ちる空間」へと昇華されます。

次回、第4回では、さらに一歩踏み込んだ特殊な演出。光の筋を強調する「クロスフィルター」や、画面を柔らかく包み込む「ディフュージョン効果」の実装について解説します。

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